営業・配送車両を保有する事業者、従業員の自転車通勤を認める企業、および自転車で業務を行うフリーランスが対象となる。一般的なオフィス系企業で車両保有も自転車通勤もない場合は、この改正による直接的な対応義務はない。2026年4月1日、自転車の交通反則通告制度(青切符)と車両による自転車側方通過義務が施行された。同年9月1日には生活道路(センターラインなし・幅5.5メートル未満)の法定速度が30km/hに引き下げられる。
改正の内容と対応の難しさ
自転車の青切符制度(2026年4月1日施行済み)
16歳以上のすべての自転車利用者を対象に、交通反則通告制度(青切符)が適用された。113種類の違反が反則金対象となる。主な違反例:ながらスマホ12,000円、信号無視6,000円、一時不停止・傘差し運転5,000円。当初は悪質・危険な違反を優先して取り締まる運用方針で、警察官が違反を認知した場合に青切符が交付される。
事業者への波及リスク:従業員が業務中または通勤中に自転車で事故を起こした場合、企業が「使用者責任」を問われる可能性がある。過去には自転車事故で約9,500万円の賠償命令が出た事例もある。通勤規程で個人賠償責任保険(限度額1億円以上推奨)の加入を義務化することで、このリスクを軽減できる。
自動車による自転車側方通過義務(2026年4月1日施行済み)
自動車が自転車の右側を追い越す際、1.5メートル以上の間隔を確保できない場合は徐行(直ちに停止できる速度)が義務となった。違反した場合は反則金7,000円・違反点数2点。悪質な場合は3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金となる。
生活道路の法定速度引き下げ(2026年9月1日施行)
「センターラインがない」かつ「道幅5.5メートル未満」の道路の法定速度が60km/hから30km/hに自動的に引き下げられる。速度制限標識の設置がなくても適用されるため、ドライバーが見落とすリスクが高い。四輪車・バイク・原付を含むすべての動力車両が対象。
対応の難しさ — 立場別
| 立場 | 難易度 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 一般中小企業(自転車通勤あり) | 中 | 社内規程の見直しが必要 |
| 配送・運送事業者 | 中〜高 | ルート調査+ドライバー教育が必要 |
| 一般中小企業(営業車両のみ) | 低 | 周知文書のみで対応可 |
| 個人事業主・フリーランス | 低 | 行動変容のみ(届出不要) |
あなたの立場別・対応ガイド
一般中小企業(自転車通勤を認める法人)
- 現状把握: 自転車通勤者の人数・通勤ルートをリスト化する
- 規程様式の入手: 国土交通省「自転車通勤導入に関する手引き」ページ(https://www.mlit.go.jp/road/bicycle_guidance.html)から「自転車通勤規定」(Word様式)と「許可申請書兼誓約書」(Excel様式)をダウンロード
- 規程に追加する条項: ①青切符を受けた場合の会社への報告義務、②個人賠償責任保険(限度額1億円以上)加入の必須化
- 従業員への周知: 青切符制度の対象違反と反則金額を文書で配布。特にながらスマホ(12,000円)を強調
- 車両ドライバーへの周知(車両保有の場合): 自転車側方通過ルール(1.5m確保または徐行)を文書で説明し、受領サインを取得
就業規則(10人以上の場合)に通勤規程を盛り込む際は、変更後に労働基準監督署への届出が必要(e-Govで電子申請可)。
配送・運送事業者
- ドライバー周知(即時): 自転車側方通過ルール(1.5m確保または徐行、違反:反則金7,000円・点数2点)を文書で周知。受領確認を取る
- 生活道路の洗い出し(9月1日前): 主要配送ルートの中で「センターラインがない」かつ「幅5.5m未満」の区間を地図で特定。Googleマップの道路幅表示と現地確認が手がかりになる
- 速度管理ルールの更新: 該当区間の制限速度(30km/h)を社内速度管理マニュアルに明記
- カーナビ・テレマティクスのデータ更新: 2026年9月以降の地図データ版に更新(各ベンダーの更新スケジュールを確認)
- スケジュール再試算: 時間指定配送の所要時間を再計算し、必要に応じてルートまたは出発時刻を調整
- ドライバー研修: 生活道路の定義、速度超過の罰則(15km/h未満超過:反則金9,000円〜)を説明
法定の届出義務はないが、安全管理規程への速度管理項目の追記を推奨する。
個人事業主・フリーランス(配送・訪問業務)
今回の改正による届出義務はない。業務形態に応じた行動変容で対応可能。
- 自転車業務利用の場合: 個人賠償責任保険(限度額1億円以上推奨)の加入状況・限度額を確認する
- 車両業務利用の場合: 自転車の横を通過する際は1.5m間隔または徐行を意識する(国家公安委員会ポータル:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/portal/system.html)
- 2026年9月1日以降: 日常的に走行している住宅街の道路(センターラインなし・幅5.5m未満)での速度を30km/h以内に管理する
社労士事務所
顧問先が自転車通勤を認める場合、就業規則・通勤規程の整備支援が主な対応。
- 規程確認: 自転車通勤を認める顧問先の就業規則・通勤規程を確認し、青切符対応条項(違反報告義務・保険加入義務)の追加が必要かを判断する
- 文案作成: 国土交通省の「自転車通勤規定」Word様式(https://www.mlit.go.jp/road/bicycle_guidance.html)を参考に、①違反報告義務、②個人賠償責任保険加入義務の条項を作成
- 届出手続き(10人以上の顧問先): 就業規則変更届を労働基準監督署へ提出。e-Gov労働手続きで電子申請可。必要書類:変更届、新旧対照表、過半数代表者の意見書
大企業・上場企業
今回の改正による直接的な対応は不要です。ただし、フリート管理部門では①配送・営業車両ドライバーへの側方通過ルール周知、②9月施行の生活道路30km/h制限に備えたルート管理規程の見直しを検討してください。多拠点・多ドライバーの場合は社労士または交通安全コンサルタントへの相談を推奨します。
今日からできる最初の一歩
一般中小企業(自転車通勤あり)の場合: 今日の昼休みに国交省サイトを開いて「自転車通勤規定」Word様式をダウンロードする。
配送・運送事業者の場合: 次の朝礼で自転車側方通過ルール(1.5m・徐行、違反7,000円)をドライバーに口頭で伝える。