2026年4月1日、貨物自動車運送事業法の改正が施行された。この改正が直接影響するのは3つのグループだ。①一般貨物自動車運送事業者(緑ナンバートラック事業者)、②貨物利用運送事業者(フォワーダー)、③外部の運送業者に荷物の輸送を委託している全業種の事業者(荷主)。
自社のトラックのみで配送が完結している事業者、宅配便・ゆうパックを個人・小口で使うだけの事業者は今回の改正による直接的な対応は不要だ。運送業に携わらない業種でも、仕入れ商品の配送や製品の出荷を運送会社に業務委託しているなら「荷主」として対象になる。
最大の変化は、無許可業者(白ナンバー)に運送を委託した荷主企業にも罰則が適用されるようになった点だ。これまでは無許可業者本人だけが処罰対象だったが、委託した側の企業も行政指導・企業名公表・罰金の対象となる。
改正の内容と対応の難しさ
変更1:荷主への「無許可業者委託禁止」罰則が新設
改正前(〜2026年3月): 白ナンバーで運送を行う無許可業者本人が処罰対象。荷主が知らずに委託しても、荷主側に直接の罰則はなかった。
改正後(2026年4月〜): 無許可業者に運送を委託した荷主企業も処罰対象になった。①国土交通大臣による是正要請 → ②勧告 → ③企業名公表 → ④100万円以下の罰金という段階的措置が適用される。「取引先が無許可だと知らなかった」は免責事由にならない。各地方運輸局の事業者一覧で取引先の許可確認を行えば、このリスクを事前に回避できる。
変更2:実運送体制管理簿の作成義務が貨物利用運送事業者にも拡大
改正前: 一般貨物自動車運送事業者(緑ナンバー)のみ対象(2025年4月から義務化済み)。
改正後: 貨物利用運送事業者(フォワーダー)にも義務が拡大。元請けとして引き受けた1.5t以上の貨物を他事業者に委託した案件ごとに、「誰が何次請けで運んでいるか」を管理簿に記録・保存する。自社がすべて実運送する場合は対象外。管理簿は運送完了日から1年間保存が義務。
変更3:書面交付義務が貨物利用運送事業者にも拡大
改正前: 一般貨物自動車運送事業者のみ対象(2025年4月から義務化済み)。
改正後: 貨物利用運送事業者にも拡大。運送契約締結時に、運賃・有料道路利用料・燃料サーチャージ・荷役作業料等を書面(電子書面可)で明示することが義務となった。無償での荷役作業強要は運送法違反かつ下請法違反となる。
変更4:二重下請け制限の努力義務が新設
一般貨物自動車運送事業者・貨物利用運送事業者に対し、真荷主から受けた運送の再委託を「2回以内(実運送は3次請けまで)」とする努力義務が新設。法的罰則はないが行政指導の根拠となる。実態のない仲介だけを行う「水屋」業者の市場排除が目的だ。
対応の難しさ(立場別)
| 立場 | 複雑さの目安 | 主な対応内容 |
|---|---|---|
| 荷主企業(全業種) | 運輸局サイトでの許可確認のみで完了 | 委託先リストの棚卸しと許可番号確認(新規取引時の慣行化) |
| 一般貨物自動車運送事業者 | 2025年4月分の追加確認のみ | 下請け段階数の点検(既存の管理簿・書面交付体制は対応済み前提) |
| 貨物利用運送事業者 | 管理簿整備・書面交付体制の構築が必要 | 実運送体制管理簿の新規整備と書面交付フォーマットの更新 |
あなたの立場別・対応ガイド
荷主企業の方(物流を外部委託している全業種)
取引先の運送事業者が正規許可(緑ナンバー)を持っているかを確認します。確認自体は一度で完了しますが、新規取引先が生じるたびに繰り返す必要があります。
- 現在の運送委託先をリストアップする: 定期的に使っている運送会社・業者の会社名と住所を一覧にする。
- 地方運輸局の事業者一覧で検索する: 各地方運輸局のウェブサイトに「一般貨物自動車運送事業者一覧」が公開されている(例:近畿運輸局 https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/00001_03125.html )。会社名で検索し、許可の有無を確認する。
- 新規取引先は許可証の写しを提出させる: 初めて取引する運送事業者とは、許可証(事業者番号記載)の写しの提出を契約条件とする。
- 確認記録を保存する: 確認日・確認方法・事業者番号をExcel等に記録し保管する(是正要請への対応根拠となる)。
一般貨物自動車運送事業者(緑ナンバー)の方
2025年4月施行の実運送体制管理簿・書面交付・運送利用管理者選任は既に義務化済みのはずです。2026年4月に追加された義務は二重下請け制限の努力義務のみです。
- 自社の下請け構造を確認する: 真荷主から受けた案件で、再委託の段階が3次請けを超えていないか確認する。
- 超えている案件があれば見直しを検討する: 努力義務のため罰則はないが、行政指導の根拠となる。取引先と構造見直しを協議する。
- 実運送体制管理簿に下請け段階を正確に記録する: 管理簿の記録が義務遵守の証明になる。
貨物利用運送事業者(フォワーダー)の方
2026年4月から実運送体制管理簿の作成・保存義務と書面交付義務が新たに適用されます。
- 管理簿の様式を入手する: 国土交通省の改正法ページ(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html)から「実運送体制管理簿関係リーフレット」をダウンロードし、参考様式を入手する。
- 対象案件を特定する: 元請けとして引き受けた案件のうち、他事業者に委託した1.5t以上の案件を整理する。
- 案件ごとに管理簿を作成する: 実運送事業者名・運送区間・下請け段階を記録する。委託先から情報通知を受ける義務があるため、各委託先に通知を求める。
- 管理簿を1年間保存する: 運送完了日から1年間の保存が義務。既存の案件管理システムで対応できるか確認する。
- 書面交付体制を整備する: 既存の取引先との契約書・注文書に運賃・附帯費用・荷役作業料の明示があるか確認し、不足分を補完する(電子書面可)。
今日からできる最初の一歩
荷主企業(物流を外部委託している事業者)の方: 次に運送会社から請求書が届いたタイミングで、相手方の会社名を地方運輸局の事業者一覧で1件検索する。確認できれば「取引先確認済み」として日付とともに記録する。
貨物利用運送事業者の方: 今週中に国土交通省の改正法ページ(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html)を開き、「実運送体制管理簿関係リーフレット」をダウンロードする。自社の既存書式と比較し、不足項目を来週の業務で補完する。