法改正ウォッチ
罰則あり 施行済み 2026年4月1日施行

「2割特例」9月末終了——30万→40万円の即時償却拡大も、税理士と今確認を

全業種中小企業個人事業主

公開日: 2026年4月9日

最重要ポイント

何が変わったか

少額減価償却資産の特例が40万円未満に拡充(令和11年3月まで延長)。インボイス2割特例は2026年9月末終了。賃上げ促進税制の教育訓練費上乗せが全区分で廃止。

誰が影響を受けるか

全業種の中小企業、個人事業主・フリーランス

何をすべきか

要対応: 消費税計算方法の切替(9月末まで)

2026年4月1日、令和8年度税制改正の一部として租税特別措置法が改正されました。業種・規模を問わず全中小企業に関わる5つの改正が同時に施行されています。主な対象は(1)インボイス登録済みの事業者(2割特例が2026年9月末終了)、(2)青色申告の中小企業者等・個人事業主(少額減価償却資産の即時経費化上限が30万円未満→40万円未満に拡充)、(3)賃上げ促進税制で教育訓練費上乗せを活用していた企業(廃止)、(4)後継者への株式承継を準備中の企業(特例措置の適用期限が令和10年3月末まで延長)です。

今回の改正の対象外となるケース:従業員数が常時400人を超える法人は少額減価償却特例(措法67条の5)の適用要件を満たさないため、同特例の恩恵を受けられません。インボイス未登録の免税事業者は2割特例の終了手続きは不要です(ただし免税事業者からの仕入を行う場合、2026年10月以降に控除割合が80%→70%に変わります)。投資額5億円未満の企業には今回新設された「特定生産性向上設備投資促進税制」の適用機会はありません。

改正の内容と対応の難しさ

1. 少額減価償却資産の特例拡充

青色申告の中小企業者等・個人事業主が備品・ソフトウェア等を購入した際に購入年度に全額を損金算入できる特例の上限が引き上げられました。

項目改正前改正後
即時全額損金算入の上限30万円未満40万円未満
適用期限令和8年3月31日令和11年3月31日(3年延長)
従業員数要件500人以下(従来)常時400人超の法人を除外(新追加)

年間の損金算入合計には300万円の上限があります。35〜39万円のノートPCや業務用ソフトウェアが購入年に全額経費化できます。申告手続きは確定申告書(法人は別表16(7)、個人は措法28条の2明細)の添付のみで完了します。

2. 賃上げ促進税制の教育訓練費上乗せ廃止

賃上げ促進税制における教育訓練費(社員研修費など)の増加分に応じた税額控除の上乗せ措置が、中小企業を含む全区分で廃止されます。中小企業向けの基本制度(賃上げ率に応じた法人税控除)は維持されますが、上乗せを活用していた場合は来期以降の税額控除額が減少します。

3. インボイス制度の2割特例終了

元免税事業者でインボイス登録した事業者が利用できる「2割特例」(売上消費税の2割のみ納付)は2026年9月30日で終了します。個人事業主のみ2026年10月〜2028年9月の2年間「3割特例」へ移行可能ですが、法人は対象外です。

免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の経過措置は段階的に縮小されます。

時期控除できる割合
2026年9月末まで80%(現行)
2026年10月〜2028年9月70%
2028年10月〜2030年9月50%
2030年10月以降30%→0%

4. 特定生産性向上設備投資促進税制(新設)

2026年4月1日から、大規模設備投資を行う企業向けの税制優遇が創設されました。中小企業者等は取得価額の4%税額控除または即時償却が可能ですが、最低投資額要件は5億円以上(年平均投資利益率15%以上)のため、大多数の中小企業は対象外です。産業競争力強化法の認定手続きも必要です。

5. 事業承継税制(特例措置)の適用期限延長

後継者への株式贈与・相続時に贈与税・相続税の納税を猶予できる特例措置の株式承継期限が令和10年3月31日まで延長されました。「特例承継計画」の提出期限(令和8年3月31日)はすでに終了しています。提出済みの方は株式の贈与・相続を令和10年3月末までに完了する必要があります。


難易度と対応の方向性

立場対応内容複雑さ
全中小企業(法人・2割特例適用中)10月以降の消費税計算方法選択・届出税理士との確認で完了
個人事業主(2割特例適用中)3割特例の選択または簡易/原則課税移行税理士との確認で完了
設備投資予定の中小企業(従業員400人以下)40万円未満資産の確定申告附票添付届出のみで完了
賃上げ税制活用企業来期控除額の再試算・計画見直し税理士との確認で完了
事業承継準備中の企業令和10年3月末までの承継スケジュール確定専門家への相談を推奨

あなたの立場別・対応ガイド

一般中小企業(法人)

【対応①】インボイス2割特例終了への対応

2割特例の適用期限は2026年9月30日です。10月以降の消費税申告方法を今から決めておく必要があります。

  1. 現在の消費税申告が「2割特例」で処理されているか確認する(会計ソフトの消費税設定または直近の申告書を確認)
  2. 10月以降の計算方法——原則課税(実額計算)と簡易課税(業種ごとのみなし仕入率)——を税理士と比較・試算して決定する
  3. 簡易課税を選択する場合は2026年9月30日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署に提出(e-Tax可)
  4. 免税事業者との仕入取引がある場合、2026年10月以降の仕入税額控除割合(80%→70%)を経理システムに反映する

【対応②】少額減価償却資産特例の活用

30万円以上40万円未満の設備・備品・ソフトウェアを購入する場合、2026年4月以降の取得分から即時全額損金算入が可能です。確定申告書に**別表16(7)**を添付するだけで適用できます。年間合計300万円の上限に注意し、複数の設備購入を計画している場合は購入順序・タイミングを税理士と確認してください。

個人事業主・フリーランス

2割特例の終了と3割特例への移行が最重要対応事項です。

  1. 直近の確定申告書で「2割特例」を適用していたか確認する(消費税申告書の「2割特例」欄)
  2. 2026年10月以降は3割特例(売上消費税の3割を納付するだけでOK、事前届出不要)への移行が可能——2028年9月まで利用できます
  3. 3割特例ではなく簡易課税を選択する場合は2026年9月30日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署に提出(e-Tax可)
  4. 30万円以上40万円未満の備品購入時は確定申告時に措法28条の2明細を添付して即時経費化できます
  5. 青色申告控除の引き上げ(2027年分〜): 電子帳簿保存法の要件を満たす帳簿を電子保存している場合、控除が65万円→75万円に。まだ対応していない場合は税理士に今年中の移行可否を確認してください

税理士・会計士事務所

担当クライアント全員への今期対応周知が必要です。以下を完了確認のチェックリストとして活用してください。

  • □ インボイス2割特例適用中の法人クライアントをリストアップし、10月以降の消費税計算方法選択を案内した
  • □ 個人事業主クライアントに3割特例(事前届出不要、2028年9月まで)の選択肢を説明した
  • □ 簡易課税への移行を検討するクライアントに届出書の提出期限(2026年9月30日まで)を案内した
  • □ 免税事業者との取引があるクライアントに2026年10月以降の仕入控除割合変更(80%→70%)を案内した
  • □ 設備投資を予定するクライアントに少額減価償却特例の拡充(40万円未満・別表16(7)添付)を案内した
  • □ 賃上げ促進税制を利用しているクライアントに教育訓練費上乗せ廃止による税額控除変化を試算した
  • □ 事業承継税制を利用しているクライアントの株式承継が令和10年3月31日までに完了する計画か確認した

大企業・上場企業

今回の改正のうち少額減価償却特例(中小企業者等限定)と2割特例(元免税事業者限定)の直接対応は不要です。ただし、賃上げ促進税制の大企業向けが令和8年3月31日(2026年度末)で廃止となっているため、今期の法人税申告における控除の最終活用と来期以降の計画への影響を社内税務担当・顧問税理士に確認してください。

今日からできる最初の一歩

一般中小企業(法人): 次回の税理士との月次面談または報告がある場合、「インボイス2割特例の終了後、2026年10月からの消費税計算を原則課税・簡易課税どちらにするか」を事前確認事項として追加してください。

個人事業主・フリーランス: 現在2割特例を適用している場合、今週中に「2026年9月末の最終適用期限」と「10月以降に3割特例(届出不要)を選択するか」を顧問税理士にメールまたは電話で問い合わせてください。

本記事は令和8年度税制改正大綱(2025年12月19日与党公表・2025年12月26日閣議決定)および2026年4月時点の情報に基づいています。今後の政令・通達等によって詳細が変わる可能性があります。最新情報は国税庁ウェブサイトまたは顧問税理士にご確認ください。

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