2026年4月1日施行の相続税法改正は、信託銀行・信託会社・税理士事務所・公益法人・NPOが対象です。一般的な中小企業の日常業務(給与計算・消費税申告・請求書発行など)には一切影響しません。ただし、資産管理・事業承継の一環として公益信託の活用を検討している個人経営者・資産家は、新旧制度の並存について税理士に確認が必要です。
今回の改正の核心は1点:公益信託法(2026年4月1日施行)の新制度に基づく「公益信託」の受託者が遺贈・贈与によって取得した財産について、相続税・贈与税の非課税扱いを明確化したことです。旧制度の「特定公益信託」は廃止されず、新制度と並存します。
改正の内容と対応の難しさ
改正前後の比較:
| 項目 | 改正前(〜2026年3月31日) | 改正後(2026年4月1日〜) |
|---|---|---|
| 非課税対象の信託 | 旧信託法に基づく「特定公益信託」のみ | 旧「特定公益信託」+新「公益信託法」に基づく「公益信託」の両方 |
| 改正された条文 | — | 相続税法第12条(相続税の非課税財産)・第21条の3(贈与税の非課税財産) |
| 旧制度の扱い | 有効 | 引き続き有効(廃止なし) |
| 遡及適用 | — | なし(2026年4月1日以降の相続・贈与に適用) |
旧「特定公益信託」は廃止されません。既存の契約を即座に変更する必要はなく、新制度への移行は委託者・受託者が個別に判断します。措置法第70条(公益信託への支出の非課税特例)も引き続き適用されます(要件:相続開始から10か月以内の支出・内閣総理大臣認定の信託)。
立場別の対応難易度:
| 立場 | 難しさ | 主な対応 |
|---|---|---|
| 一般中小企業(法人) | なし | 対応不要 |
| 個人事業主・フリーランス | なし〜低 | 公益信託を相続対策として検討中の場合のみ税理士に確認 |
| 税理士・会計士事務所 | 低〜中 | 第14表の最新様式確認・顧客への新旧制度説明の準備 |
| 信託銀行・信託会社 | 中〜高 | 新制度対応の社内規程整備・顧客説明資料の更新・許可申請手続き |
| 公益法人・NPO | 中(新制度で認定を受ける場合のみ) | 受託者(信託銀行)を通じた認定申請の確認 |
あなたの立場別・対応ガイド
一般中小企業(法人)
今回の改正による直接的な対応は不要です。ただし、経営者個人が資産管理・相続対策として公益信託の活用を検討している場合は、下記「個人事業主・フリーランス」のセクションを参照してください。
個人事業主・フリーランス
相続対策として公益信託を現在検討していない場合は対応不要です。
検討中の場合:新制度(公益信託法)と旧制度(特定公益信託)のどちらを利用するかは、信託銀行と税理士の合同確認が必要です。以下を確認するよう税理士に相談してください:
- 租税特別措置法第70条(公益信託への支出の非課税特例)の適用要件を満たすか
- 新制度と旧制度でどちらが目的に合致するか
税理士・会計士事務所
.go.jpソースで3件の具体的手順を確認しました(Pattern A):
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国税庁サイトで第14表(令和7年分用)を確認する
「相続税の申告書等の様式一覧(令和7年分用)」(nta.go.jp)から第14表をダウンロードし、公益信託・公益法人への寄附に関する記載欄の変更有無を確認する。 -
顧客の公益信託が旧制度か新制度かを識別・整理する
既存顧客で「特定公益信託」(旧制度)を活用中または検討中の場合、新旧制度の違い(制度根拠・申請先・対象財産)を整理して説明資料を更新する。 -
措法70条の適用要件を最新情報で確認する
「相続財産を公益信託に支出した場合の非課税特例」の要件(申告期限10か月以内・内閣総理大臣認定の信託)が改正後も変更ないか確認する。
- 届出様式:相続税申告書 第14表
- 電子申請:e-Taxによる相続税申告が可能
- 情報源:国税庁 申告書等様式一覧(令和7年分)
信託銀行・信託会社
新制度の公益信託を引き受ける場合の手順(Pattern A):
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内閣府大臣官房政策評価広報課に事前連絡する
新制度(公益信託法)に基づく公益信託を引き受ける場合は、まず内閣府の受付窓口(03-6257-1295)に電話し、提出書類と申請手順の案内を受ける。 -
必要書類を準備して申請する
信託設定趣意書、信託財産の種類・総額を証する書類、委託者・受託者の略歴書、事業計画書・収支予算書(初期2年度分)などを整備し、郵送またはメールで申請する。標準処理期間:約1か月。手数料:不要。 -
既存顧客向けの新旧制度説明資料を更新する
旧「特定公益信託」を保有中の顧客に対し、新制度との違いと移行の任意性を説明する資料を作成・更新する。
- 届出様式:公益信託引受け許可申請書(内閣府書式)
- 電子申請:要問い合わせ(郵送・メール可)
- 情報源:内閣府 公益信託の引受けの許可の申請
公益法人・NPO
新たに公益信託として認定を受けることを検討している場合、申請の主体は受託者(信託銀行)です。公益法人・NPO自身が直接申請するのではなく、受託者を通じて内閣府への認定申請が行われます。
- 誰に相談すべきか:取引のある信託銀行の公益信託担当部門、または公益法人・信託実務に詳しい弁護士・司法書士
- 何を確認するか:新制度(公益信託法)での認定基準(公益目的事業の明確化・ガバナンス要件)と、既存の旧制度信託との違い
手続きの詳細は信託銀行に相談することをまず推奨します。
今日からできる最初の一歩
税理士・会計士事務所の方:
今週の業務開始時に、国税庁サイト(nta.go.jp)で「相続税の申告書等の様式一覧(令和7年分用)」を開き、第14表のPDFをダウンロードして変更点を確認する。顧客対応は確認後に判断できます。
信託銀行・信託会社の方:
次の月次会議の議題に「公益信託 新制度対応状況」を追加し、既存の「特定公益信託」顧客リストと説明資料の更新担当者を確認する。内閣府への申請が必要な場合は窓口(03-6257-1295)に事前連絡する。