法改正ウォッチ
要対応 施行済み 2026年4月1日施行

週20時間以上のパートが対象に——「106万円の壁」10月撤廃で人件費は変わる?

全業種飲食・宿泊業農業・林業・漁業

公開日: 2026年4月7日

最重要ポイント

何が変わったか

いわゆる「106万円の壁」(月額8.8万円の賃金要件)が2026年10月より撤廃される。週20時間以上勤務という要件のみを満たせば社会保険の加入対象となり、企業規模要件も段階的に撤廃される。

誰が影響を受けるか

全業種の事業者、短時間労働者を雇用する事業者、個人事業形態で5人以上を雇用する農業・飲食業等の事業者

何をすべきか

要対応: 週20時間以上のパート在籍確認と資格取得届の準備

短時間労働者(パート・アルバイト)を雇用している事業者、および農業・林業・漁業・飲食サービス業等の個人事業所で従業員5人以上を雇用している事業者は、今回の改正が直接関係する。一方、正社員のみを雇用している事業者、または短時間労働者が週20時間未満のみである事業者は、2026年10月時点では追加の手続きは発生しない。また、高齢者(60歳以上)を雇用している事業者は、2026年4月1日施行済みの在職老齢年金基準額変更の影響を受ける場合がある。

「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」が2026年4月1日に施行され、社会保険の適用範囲が段階的に拡大される。最大の実務インパクトは2026年10月施行の「106万円の壁」撤廃と、2029年10月施行予定の個人事業所への適用拡大の2点である。

改正の内容と対応の難しさ

① 106万円の壁の撤廃(2026年10月施行)

現行の「月額8.8万円以上(年収106万円以上)」という賃金要件が廃止される。2026年10月以降、週20時間以上の勤務という要件を満たす短時間労働者は、賃金額にかかわらず社会保険の加入対象となる。企業規模要件(現行:被保険者51人以上)も段階的に縮小・撤廃され、最終的に2035年10月にはすべての企業規模が対象となる予定。

従業員側の保険料負担を緩和するため、標準報酬月額12.6万円以下の新規加入者に対して、事業主が保険料を多く負担できる「特例措置」が3年間設けられる(2026年10月から)。

② 個人事業所への適用拡大(2029年10月施行予定)

現行で社会保険の非適用業種(農業、林業、漁業、宿泊業、飲食サービス業等)の区分が廃止される予定。常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所は業種を問わず適用対象となる見込み(詳細は厚生労働省の公式情報で最終確認を推奨)。

③ 在職老齢年金基準額の引き上げ(2026年4月1日施行済み)

60歳以上の在職者の年金が減額・停止される基準額が月約62万円に引き上げられた(改正前:約51万円)。高齢者の就労継続を促す措置。詳細は厚生年金保険法の改正記事を参照。

難易度開示(対応の重さの目安)

立場対応の難しさ何が必要か
一般中小企業(法人)★★☆対象者洗い出し + 資格取得届の提出
個人事業主(非適用業種)★★★2029年10月までに新規適用手続き一式
個人事業主(法定17業種・既適用)★☆☆短時間労働者の加入要件確認のみ
税理士・会計士事務所★☆☆顧問先への情報提供のみ
社労士事務所★★★顧問先企業の手続き代行・スケジュール管理

脅威と対処は表裏一体:2026年10月に対応漏れがあると未加入のまま被保険者資格を取得したことになり、遡及して保険料が発生する。今から対象者を把握しておけば、本番当日の混乱を防げる。

あなたの立場別・対応ガイド

一般中小企業(法人)

週20時間以上のパート・アルバイトを雇用している場合、2026年10月までに以下を実施する。

  1. 自社の短時間労働者(パート・アルバイト)全員の勤務時間を確認し、週20時間以上の者をリストアップ
  2. 2026年10月時点で「特定適用事業所」に該当するかを確認(被保険者数が新たに51人以上になる場合は「特定適用事業所該当届」を提出)
  3. 対象となる短時間労働者に社会保険加入の通知と説明を実施
  4. 給与計算システムの保険料控除設定を更新(健康保険・厚生年金)
  5. 対象者ごとに「被保険者資格取得届」を日本年金機構へ提出(e-Gov電子申請可)
  6. 被扶養者がいる場合は「被扶養者(異動)届」も同時提出

手続き全体は社会保険労務士に依頼するか、または日本年金機構の「社会保険適用拡大特設サイト」(mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/)のチェックリストを活用すると漏れが少ない。

個人事業主・フリーランス

農業・林業・漁業・宿泊業・飲食サービス業などの個人事業主で、従業員を5人以上雇用している場合、2029年10月の適用拡大が関係する。現時点(2026年)での緊急手続きは不要だが、3年以内に対応が必要。

  1. 現在の業種が「法定17業種外」(農業・林業・漁業・飲食サービス業等)かどうかを確認
  2. 常時雇用している従業員数が5人以上かどうかを確認
  3. 2028年以降に使用者負担分の保険料試算を実施し、キャッシュフローへの影響を把握
  4. 2029年10月が近づいたら「新規適用届」を日本年金機構の窓口またはe-Gov経由で提出
  5. 被保険者資格取得届・被扶養者届を対象従業員分まとめて提出

法定17業種(製造・建設・物販・医療など)の個人事業所でかつ既に社会保険適用済みの場合は、短時間労働者の加入要件(週20時間以上)を確認するだけで足りる。

税理士・会計士事務所

今回の改正による税務・会計実務への直接的な影響はない。ただし、顧問先(特に飲食業・農業の個人事業所、パート・アルバイトを多く雇用する法人)から相談を受ける可能性があるため、2026年10月の短時間労働者適用拡大スケジュールと2029年10月の個人事業所適用拡大スケジュールを把握しておくことを推奨する。

社労士事務所

2026年10月施行に向けて顧問先への支援が集中する時期となる。

  1. 顧問先ごとに短時間労働者(週20時間以上)リストを一覧化し、新規加入対象者を特定
  2. 企業規模要件の段階的撤廃スケジュールをもとに顧問先が「特定適用事業所」に該当する時期を把握
  3. 「特定適用事業所該当届」の要否確認と書類作成の代行
  4. 「被保険者資格取得届(短時間労働者用)」の作成・提出代行(e-Gov経由)
  5. 農業・飲食業等の個人事業所顧問先については、2029年10月の新規適用スケジュールを別途説明・準備支援

今日からできる最初の一歩

一般中小企業(法人)の場合: カレンダーの「2026年7月」に「週20時間以上のパートをリストアップ」とリマインダーを設定する。10月施行の3か月前に動き始めれば届出準備に余裕が生まれる。

個人事業主(農業・飲食業等)の場合: 今年の確定申告が終わったタイミングで、顧問税理士または社労士に「2029年の社会保険適用拡大の影響額を試算してほしい」と依頼する。早期試算が対応方針の判断材料になる。

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