法改正ウォッチ
要対応 施行済み 2026年4月1日施行

在職老齢年金の壁が「62万円」に——約20万人が全額受給、高齢社員への周知を

全業種社会保険労務士事務所大企業・上場企業

公開日: 2026年4月9日

最重要ポイント

何が変わったか

在職老齢年金の支給停止基準額が月額48万円(直近年度は51万円)から62万円に引き上げられ、支給停止対象者が約50万人から約30万人に減少する。また、離婚時年金分割の請求期限が離婚後2年以内から5年以内に延長された。

誰が影響を受けるか

全業種、社会保険労務士事務所、大企業・上場企業

何をすべきか

要対応: 60代以上の従業員への制度周知(届出・申請なし)

2026年4月1日、厚生年金保険法の改正が施行された。変更の中心は「在職老齢年金の支給停止基準額の引き上げ」と「離婚時年金分割の請求期限の延長」の2点。65歳以上の従業員を雇用している企業にとっては、高齢社員の「働き控え」が解消されるという実務的な意味がある。個人事業主で従業員を雇用していない方や、65歳未満のみを雇用している企業には直接的な影響はない。届出・申請・システム改修といった行政手続きは、いかなる事業者にも発生しない。

改正の内容と対応の難しさ

在職老齢年金の支給停止基準額の引き上げ(第46条)

在職老齢年金とは、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受給する65歳以上の方について、「月収+年金月額の合計」が一定基準を超えた場合に超過分の2分の1が支給停止される制度。この基準額が月額48万円(直近年度は51万円)から62万円に引き上げられた。

項目改正前改正後
支給停止基準額月額48万円(直近51万円)月額62万円
支給停止対象者(推計)約50万人約30万人
新たに全額受給へ約20万人

具体例: 月収40万円・年金月額20万円の高齢社員の場合、改正前は合計60万円が基準48万円を超えるため6万円が支給停止(受給額14万円)。改正後は合計60万円が新基準62万円を下回り、年金が全額支給(受給額20万円)となる。

基準額の引き上げは2026年4月1日に施行済み。経過措置はなく、4月以降の在職中の年金計算に即時反映される。

離婚時年金分割の請求期限の延長(第78条の2)

民法の財産分与請求権の除斥期間延長に伴い、離婚時の厚生年金分割請求期限が「離婚後2年以内」から「5年以内」に延長された。

項目改正前改正後
年金分割請求期限離婚後2年以内離婚後5年以内

経過措置として、2026年3月31日以前の離婚には旧来の2年期限が引き続き適用される。2026年4月1日以降の離婚から5年期限が適用される。この変更は個人の権利に関するもので、事業主が手続きを行う場面はない。

対応の難しさ

読者タイプ難易度必要な対応
一般中小企業(法人)情報提供のみで完了
個人事業主・フリーランスなし対応不要
社労士事務所顧客への情報提供で完了
大企業・上場企業低〜中社内規程の見直しを検討

行政手続きは不要。「届出のみで完了」ですらなく、対応の主体は「高齢社員への情報周知」である。ペナルティや罰則は存在しないが、知らずに放置すると従業員が年金額を気にして就業を抑制し続ける状態が続く。

あなたの立場別・対応ガイド

一般中小企業(法人)

今回の改正による届出・申請は一切不要。60代以上の従業員を雇用している場合は、以下の3ステップで対応が完了する。

  1. 60代以上の従業員が在籍しているか確認する
  2. 在職老齢年金の改正概要(基準額が月額62万円に引き上げられた)を口頭または書面で伝える
  3. 就業時間を増やしたい従業員がいれば、雇用条件変更の意向を確認する

参考:厚生労働省 在職老齢年金について

個人事業主・フリーランス

今回の改正による直接的な対応は不要。ただし、自身が65歳以上で厚生年金を受給しながら就労している場合は、支給停止基準の引き上げにより受取年金額が増加している可能性がある。気になる場合は最寄りの年金事務所または社会保険労務士に確認するとよい。

社労士事務所

顧客企業が65歳以上の従業員を雇用している場合、改正内容を積極的に提供する好機となる。

  1. 顧客リストから65歳以上の従業員を雇用している企業を抽出する
  2. 厚生労働省の改正案内資料を確認する(厚労省サイト
  3. 顧客に改正内容を案内し、就業時間を増やしたい従業員がいるかどうかを確認するよう促す
  4. 希望がある場合、報酬体系・雇用条件の見直しを支援する

離婚時年金分割については、従業員から相談があった際に新しい請求期限(5年)を正確に案内できるよう把握しておくこと。

大企業・上場企業

人事部・総務部で定年再雇用制度の説明資料を更新する。在職老齢年金の基準額引き上げにより、フルタイム勤務を希望する高齢社員が増加する可能性がある。

  1. 人事部門で現行の定年再雇用規程を確認する
  2. 在職老齢年金受給中の従業員の状況を把握する
  3. 勤務時間・報酬体系の柔軟化を検討し、必要であれば社労士と規程改定を協議する

今日からできる最初の一歩

一般中小企業の場合: 今月の給与明細を配布するタイミングで、60代以上の従業員に「在職老齢年金の基準額が4月から月額62万円に引き上げられた」と一声かける。

社労士事務所の場合: 次回の顧客訪問時に、65歳以上の従業員がいる顧客企業1社に対して改正の概要を口頭で共有する。

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